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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)162号 判決 1997年12月24日

アメリカ合衆国

60098 イリノイ州 ウッドストック ウエスト レイク ショア ドライブ 2200

原告

オートマチツク リクイツド パツキツジングインコーポレーテツド

代表者

ジャーハード エイチワイラー

訴訟代理人弁理士

白浜吉治

訴訟復代理人弁理士

小林義孝

ドイツ連邦共和国

74429 サルツバッハー ローフェン タルシュトラーセ 22-30

被告

コッチャーープラスティック マシーネンバウ ゲゼルシャフトミット ベシュレンクテル ハフツング

代表者

ベルント ハンセン

訴訟代理人弁護士

宇井正一

訴訟復代理人弁理士

中山恭介

主文

特許庁が、平成6年審判第15281号事件について、平成8年2月20日にした審決中、特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第2項及び第3項に記載された発明についての特許を無効とするとした部分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

主文第1、第2項と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

(1)  原告は、名称を「熱可塑性材料から成形された容器、その製造方法および装置」とする特許第1730290号発明(昭和57年8月25日出願(優先権主張1981年8月26日アメリカ合衆国、1982年8月3日アメリカ合衆国)、平成4年3月30日出願公告、平成5年1月29日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。

被告は、平成6年9月8日、原告を被請求人として、本件特許につき無効審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成6年審判第15281号事件として審理したうえ、平成8年2月20日、「特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第2項、第3項に記載された発明についての特許を無効とする。特許第1730290号発明の明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての審判請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年5月13日、原告に送達された。

(2)  原告は、平成8年8月9日、本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を平成8年審判第13419号事件として審理したうえ、平成9年5月2日、上記訂正を認める旨の審決をし、その謄本は、同月14日、原告に送達された。

2  上記訂正前の特許請求の範囲第2、第3項の記載

「(2) 閉成された主型内に設定され、垂直方向に延びる細長い中空チューブ形状を有する押出された長さのパリソンから直立容器を成形する方法であって、

主型組立体内のパリソンから容器胴部が成形される際に、容器をモールド成形して充填を行うための吹込み・充填用組立体の挿入に適合する閉成された主型よりも上にあるパリソンの残部長さ部分の頂部に開口を維持し、

その後、前記パリソンの頂部開口から前記吹込み・充填用組立体を移動させ、

次いで、モールド成形され充填された容器の頂部を密封する方法において、

前記容器胴部が成形された後、<1>少なくとも一時的に、前記パリソンの頂部開口を維持し、かつ<2>容器を密封するに先立って、モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口、すなわち閉成された主型よりも上にあるパリソンの残部長さ部分におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を実施することから成る付加的手順を含む容器製造方法。」

「(3) 垂直方向に延びる細長い中空チューブ形状を有する押出し長さのパリソンから容器を成形するための装置であって、

<1>頂部開口を有する容器胴部を、最初に成形するための第一型すなわち主型装置と、<2>第一型よりも上で上方へ延びるパリソンの一部長さ部分におけるパリソン頂部に開口を維持するための把持装置と、<3>モールド成形された容器の頂部を密封するための第二型すなわちシール用型装置とを有する前記容器成形装置において、

モールド成形された容器胴部におけるパリソンの頂部開口、すなわち上方へ延びる部分におけるパリソンの頂部開口を介して二次操作を行うための二次操作装置を具備する容器製造装置。」

3  上記訂正により訂正された特許請求の範囲第2、第3項の記載

第2項につき、訂正前の第2項末尾の「二次操作を実施することから成る付加的手順を含む容器製造方法。」との記載が、次のとおりに訂正された。

「二次操作を実施することから成る付加的手順を含み、

その二次操作が、パリソンの残部長さ部分にインサート物を設定し、該インサート物の少なくとも一部に向って前記残部長さ部分の一部を押圧することにより前記容器を前記インサート物に対して密閉状態にする工程を含み、かつ、その押圧する工程が、前記パリソンの一部を前記インサート物に対してさらに押圧することにより破損し易い肉厚の薄いウエブで一体に結合される第一部分と第二部分とを有し、前記インサート物に当接する周辺壁を形成する工程を含むことを特徴とする前記方法。」

第3項につき、訂正前の第3項末尾の「二次操作を行うための二次操作装置を具備する容器製造装置。」との記載が、次のとおりに訂正された。

「二次操作を行うための二次操作装置を具備し、

その二次操作装置が、容器胴部の頂部開口にインサート物を設定するための装置と、パリソンを前記インサート物の少なくとも一部に向って押圧することにより前記容器を前記インサート物に対して密閉状態にするとともにパリソンの一部をさらに押圧することにより、破損し易い肉厚の薄いウエブで結合される第一部分と第二部分とを有し、前記インサート物に当接する周辺壁を形成する装置とを含むことを特徴とする前記装置。」

4  審決の理由の要旨

審決は、本件発明の特許請求の範囲第2、第3項に係る各発明(以下「本件第2発明」、「本件第3発明」という。)の要旨を訂正前の特許請求の範囲第2、第3項記載のとおりと認定したうえで、本件第2、第3発明は、いずれも本件発明の出願の優先権主張の日前に出願され、その出願後に出願公開された特願昭56-115014号出願(特開昭57-55806号)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一(本件第2発明については実質的に同一)であると認められ、両者の発明者及び出願人は同一でないから、本件第2、第3発明に係る特許は、特許法29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項の規定により無効とすべきものとした。

第3  当事者の主張

1  原告

審決の理由のうち、本件第2、第3発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲第2、第3項記載のとおりと認定した点は、訂正審決の確定により特許請求の範囲第2、第3項が前示のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになるので否認する。

審決が本件第2、第3発明の要旨の認定を誤った瑕疵は、その結論に影響を及ぼすものであることが明らかであるから、審決は違法として取り消されなければならない。

2  被告

訂正審決の確定により特許請求の範囲第2、第3項が前示のとおり訂正されたことは認める。

第4  当裁判所の判断

訂正審決の確定により、本件明細書の特許請求の範囲第2、第3項の記載が前示のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、これにより本件第2、第3発明の要旨を構成するものとなった前示訂正部分の構成を含めた訂正後の本件第2、第3発明につき、審決が先願発明との同一性の有無を判断していないことは、被告の明らかに争わないところである。

そうすると、審決が、本件第2、第3発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲第2、第3項記載のとおりと認定したことは結果的に誤りといわなければならず、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は、結果的に瑕疵あるものとして、取消を免れない。

よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担及び上告のたあの附加期間の付与につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、158条2項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

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